Cooperative inputs of Bmp and Fgf signaling induce tail regeneration in urodele amphibians

 

論文はこちら

 

BMP+FGFが四肢において「傷修復反応」を相転移(?)させ、「器官(四肢)再生反応」に転換させうることは2011~2014の3本の論文にまとめてある(業績参照)。今回は、同様のインプットが四肢ではなく尻尾においても同様の器官再生反応を誘導しうることを報告したもの。

 この研究の詳細は論文を読んでいただくとして、簡単に説明すれと以下のような内容に要約できる。

 1)尻尾に傷をつけだけでは尻尾の修復が起こるだけ

 2)神経組織(中枢神経)を傷口に無理やり配向させれば、再生反応

 3)神経の代わりにBMP+FGFsでも再生反応惹起

 4)イモリでもできるよ

BMPとFGFが再生反応をトリガーする神経因子であるという事を別角度から強く示唆する研究成果と言える。

 

 この研究成果で強調したいのは、四肢だけではなく、他器官においても器官再生反応を「同一のインプット」で引出せたという事である。器官普遍的に再生反応を起動できるインプットを示唆しているのではないだろうか?地球上の生物を見ても、再生できる動物はえてして多くの器官を再生できる。対して再生できない物は概してすべての器官において再生能力を有さない。このAll or Nothingの再生能力が、器官普遍的に再生を支配している単一の基盤的システムによって支配されていると仮定すればうまく説明がつけられるのではないだろうか?今後の研究室の方向性を暗示する一歩だと勝手に思っている。

 

BMPとFGFがあれば、ウーパーにおいては「四妖拳」「2尾3尾~9尾のアホロートル」もできますね…やらないけど

 

Ectopic blastema induction by nerve deviation and skin wounding: A new regeneration model in Xenopus laevis "

 ⇒論文はこちら

 

これまで、私たちの研究グループはウーパールーパーにおいて分子レベルで四肢の開始を促す因子の同定に成功しました。現在はこの研究に関してはよりファインチューニングされ、論文を投稿中です。この研究の先には、再生不能動物へ同定した再生物質を与えて効能をみるということが考えられると思います。再生不能動物と言えば、マウス・ヒトを思い描きがちですが、このレベルの研究へ昇華させるにはまだまだ時間が必要です。高等脊椎動物への応用へ向けた第一歩として、ウーパールーパーよりはヒトに近いとされる「アフリカツメガエル」を用いて、再生開始機構の比較をしようとした試みが本論文の趣旨になります。アフリカツメガエルは、四肢切断後再生反応自体は観察できます。しかし、その再生は不完全であり、「スパイク」と呼ばれる円錐状の構造が最終的には形成されてしまいます。この「再生の開始はできるが、不完全に終わる」という再生形態は、ヒトとウーパールーパーの中間的存在として研究されてきました。しかし、なぜ不完全なのか?なぜ、再生そのものは開始出来るのか?など依然判然としていません。我々は、なぜ再生そのものが開始できるのかと言う問いに着目しました。すでにウーパールーパーにおいて再生開始を支配する分子を突き止めた我々にとっては当然の着想だと思われます。初めに、ウーパールーパーと同じ機構で再生の開始を考える事ができるのかを検証することにしました。そこで、「ウーパーの過剰肢付加モデル」で明らかにした開始機構が適用可能かどうかという観点から、上記問題にアプローチしました。開始機構がウーパールーパーと同じであるならば、過剰肢の誘導は「神経+傷」で可能なはずです。反対に、アフリカツメガエルの再生機構はそもそもウーパールーパーものとは異なるものであるのであれば、同じ方法では過剰肢は形成できない可能性が高いはずだと考えました。詳しい内容は重要ではなく、本論文が主張することは、過剰肢(過剰スパイク)の形成は「神経+傷」で可能であったという事です。この成果ははじめの一歩にすぎません。今後、ウーパールーパーで同定した分子を中心に、ウーパールーパーでは不可能だったより深い分子実体を掴むこともモデル生物であるアフリカツメガエルであれば可能です。また、切断肢ではなく皮膚損傷を実験のベースに据えられることから、ウーパールーパー、アフリカツメガエル、ヒト(マウス)といったSide-by-Sideの比較解析がより容易に行えるようになります。今後の基盤となる報告であると自負しています。

 

 

これまでの研究において四肢再生惹起に必要なものは

「神経」+「皮膚損傷」

であることは明らかになっていました(Endo et al.,2004, Dev. Biol.)

 

 

皮膚損傷、それに続いて起こる事象は多少の差異はあるものの、基本的には高等脊椎動物で起こる皮膚修復と考えてもそれほど大きな祖語はないでしょう。

そこに神経が参画するとなぜか四肢再生が励起されます。

神経から何が出ているのでしょうか?

これを部分的に示したのが2011年の論文です。

FGF-Signalingの活性化で、神経因子の代替が可能であることを示しました。

 

今回の研究成果は、この成果を発展させたものです。

前回の成果を発展させるべく、次世代シーケンシングによるデータの洗い出しを進めていました。その中で、とあるカスケードの関与を疑わせるものが複数ありました。そして、検証可能なものをつぶしてゆく過程で見えてきたのが「GDF5」の使用です。

GDF5単独でも「ある程度」の再生惹起を見ることができました。

そしてさらに、前回の成果でもあるFGF2, FGF8GDF5に足すことで、これら3因子が「再生惹起因子」として働くことを示しました。

最終的に神経の参画なしで「足を生やす」ことに成功しています。

(上の図)

世界で初めて、「成体における人工物による四肢誘導」という成果と言えます。

 

 

しかし、正直に言えば現段階では穴あき状態です。

先に問題点を書来ます。

①これら3因子は長年探されていた「神経因子」ではない。

②これら3因子はMouseタンパク質を使用した結果であり、

  内在性のファクターを必ずしも示さない

③「ぶっかけ実験」 

 

1については確かに神経なしで再生を惹起できますが、神経因子である確証はありません。GDF5は特に神経因子ではないと思われます(神経発現がない)。ですので、神経因子の下流で働く因子であるのか、もしくは同じ下流を使用する「本当の神経因子」の代替物として働いている可能性を考えています。

2については、マウスリコンビナントタンパ質を使用した実験で、ウパそのものの該当タンパク質とは、その働きは似て似ざるものかもしれません。この可能性は現段階では否定する実験をなしえないので、そのままになってしまっています。

3については「旧世代の遺物」として扱われる、所謂「ぶっかけ実験」であることは否定しません。

 

正直な話、この実験はまだまだ未完成です。

でも、胸を張って言えるのは

 

「皮膚+再生3因子」で再生が惹起できる

 

ということを示したことです。

この先、下流シグナルなどから「本当の神経因子」を見つけるのはそう難しくはないでしょう。

今まで全くの暗闇であった、200年にもわたる謎に初めて光を差し込んだといえると思っています。

 

もう一つ、この成果によって初めて「高等脊椎動物への応用」を具体的に考えられるようになると考えています。

この3因子の働きを順次高等脊椎動物にさかのぼってゆくことで、どこがどう違うのか?を調べることができるようになります。

 

 

個人的には、この先10年の礎になる成果であると信じています。

論文各所に、マニア向け「意味深成果・議論」をちりばめてあるのも、ポイントです。

 

今後は、

A)下流カスケードの確定と「本物の神経因子」の確定

B)高等脊椎動物への応用 (カエル→鶏→マウス)

 

に注力してゆけると考えています。

 

 

 

 

*写真は実際の論文にはないものです

 

Accessory limb induction on flank region

 and its muscle regulation in axolotl  

      Developmental Dynamics, 2013

 

→当研究室の所属していた博士学生の論文です。

もともとの目的は「筋肉細胞」の起源を問うことでした。

しかし、リバイスの過程でだいぶその部分を削り取られてしまい、結局は「わき腹から足生えます」という論文になってしまいました。

 

四肢再生過程において、筋肉は所謂「多能性を有する再生芽細胞」ではない可能性が高いです。

その昔、筋肉が脱分化して軟骨などになるという論文が世間をにぎわせましたが 、結局その後は、同じグループが否定する形に終わっています。

ですので、再生過程において、筋肉は切断部基部から供給される筋衛星細胞(筋肉にしか分化しない)によって再構成されるといえるでしょう。

 

問題は、その供給される筋肉は「四肢起源でなければならないか?」ということにありました。

というのも、皮膚(真皮)は四肢起源である必要性があるからです。

四肢以外の皮膚を移植しておくと、切断後その四肢は再生できなくなってしまいます。

このように事象から、皮膚を起源とする再生芽細胞には「Limbness」と言われる四肢としての自己認識が細胞に必要であるということが強く示唆されます。

筋肉に関してはどうでしょうか?

 

 

 

これに答えるために「わき腹に足を生やしました」。

わき腹に

「四肢由来に皮膚片x2」

「神経」

(「レチノイン酸」)

を入れることで高頻度に四肢誘導が可能であることを見出しました。

 

この時に「筋肉」を四肢から持ってきません。

しかし、できたわき腹脚には筋肉がありました。

 

この筋肉はどこから来たのでしょうか?

 

論文では削られた部分でしたが、四肢以外の筋組織が四肢形成に参画できうる可能性を示していました。

ですので、本来であれば、四肢以外の筋肉が参画できることを示唆していたのですが、この論文ではここまで到達できていません。

 

あくまで

「足がはやせました!」

「わき腹肢に筋肉有りました!」

「筋肉の発生過程調べました!」

「HGFシグナリングで制御されています。高等脊椎動物と同じです」

「やっほ~」

 

で終わっています。

この論文を発展させれば、今後は「再生においてどの細胞種は大量培養による供給が可能になるのか?」などに応用できると思います。

また、「Limbness」と言われる「位置情報」の正体が何であるの可に対してもアプローチするうえでの重要な知見になると考えています。

 

 

 

 

形態的に変化を起こす

これは発生生物学における「醍醐味」であると考えます。

分子生物学の隆盛において、ともすれば形態学的な変化よりも分子の動きに重点が置かれる昨今にあっては、このような実験は時代錯誤も甚だしいものです。

でも、「おもしろい」。

 

何はともあれ、足がたくさん生える。

誰しもが「なぜ?」と言える現象が起こせる。

 

「面白い」を仕事にできるということを再認識できる実験系の開発であると個人的には思っています。

 

Hさん、お疲れ様でした。